隣の芝生は青く見える?

ワインを選ぶ基準のひとつとして、産地や畑の格付けなどをチェックされる方も多いと思います。
特級畑、一級畑、AOC、DOCG、などなど。
素朴な疑問として、特級畑の隣の畑で何の格付けもない畑というのも良くみられるのですが、畝を挟んで向こう側とこちら側何が違うのでしょうか?
ぶどう造りというのは天、地、人、全ての自然の要素が関わってくるものです。
天、地、すなわち気候、地形、地質のことですが、大気、天候、地形、地質については連続性のある一連の流れがあります。しかしそれぞれが相関し、変化しています。

天候は地形によって変わります。大気が山にぶつかり雨を降らせ、山を越えると乾燥した空気を流します。川や海を越えると湿潤になります。
大気は常に変化し、特級畑でも悲観的な天候をもたらし、格付けなしの畑でも素晴らしい天候をもたらすこともあります。近年の急激な天候不順でよく見られるようになりました。

これまでぶどう造りの北限とされていたところを越えてぶどうが造られることもみるようになりました。ベネルクスや北欧でも実際にワイン造りが始まっています。

地質はプレート移動などの地震で断層などが発生することもありますが地層や地質は連続しています。
特級畑の隣の格付けなしの畑でも実はポテンシャルを持っている畑はずいぶんとあるものです。
例えば、ボルドーには格付けシャトーというものが存在しますが、コート・ド・ボルドーなど格付けなしの家族経営の小シャトーの中に注目すべきワインもあります。
ほかにもブルゴーニュにはモンラッシェ村の隣にサントーバン村があり、ここの白ワインはシャサーニュモンラッシェに隣接し、いくつかの一級畑があるものの味わい的にはピュリニ・モンラッシェにも勝るとも劣らない。以前は価格も安く、コストパフォーマンスが良く、筆者も「隠れピュリニ・モンラッシェ」などど名付けておすすめしたものですが、今ではすっかり価格が高くなり、もはや日常楽しむワインではなくなってしまいました。

人による影響もずいぶんあります。
造る人の情熱やビジネスの背景によって、造られるワインにもずいぶんと違いが見られます。ある畑では無農薬で畑の手入れも行き届いている区画があっても、その隣で農薬をまき散らかしていれば、ビオディナミの畑でも意味のないものになっていることもあります。
こうしてみると人のつながりも大気や地質と同様に連続性のあるものだと感じます。
ここに著したことはほんの一例で多種多様な連続性によって様々な影響があるので、その本質を見るには実際に行ってみて、そこで人と話してみてみないと見えないものがあります。
筆者自身も多少その経験があるので、飲み手にフィードバックして、あまり聞かない原産地だが良い環境で育てられたワインをご紹介していきたいと思います。