2018年6月

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現実的なボルドーワイン
ボルドーワインは毎年価格が高騰し、商品の価値というより投機的価値が重要視されている時代になってきました。中国や新興の経済発展を遂げている国の人々の購買ターゲット、あるいはステイタスの象徴として青天井なマーケットはもはや日本人の手から離れつつあるアイテムになってきています。とはいえボルドーのすべてのシャトーがそのようなビジネスを行っているわけではなく、それぞれのポリシーで商品の味わいありきでワインを造る生産者もたくさんいます。消費者がそれぞれの生産者がどのような思いでワインを造り、ビジネスを行っているかを見極めなければならない時代になってきているのでしょう。
その中で私たちが普段食べる夕食のテーブルに上るボトルがどのような価格帯で、どんななスタイルで造られ、どんな味わいなのか、その味わいが夕食にうまくマッチするのかを見極めなければなりません。
その中でAOCオーメドックという生産エリアはサンジュリアン、マルゴーに挟まれたリーズナブルで新しい発見があるエリアであると言えます。
シャトー・ド・ラマルク2007(残り1本>ヴィンテージ移行、2008) はヴィンテージとしてもちょうど飲み頃に差し掛かっている状態で、価格もお手頃 http://aquavitae.ocnk.net/product/71 でカべルネ・ソーヴィニヨン46 % メルロー25 % カベルネ・フラン24 % プティ・ヴェルド5 % と伝統的なボルドーブレンドが楽しめる1本です。
お問い合わせをお待ちしております。

西アフリカ サハラに育つぶどう。
サッカーワールドカップで日本代表が初戦にコロンビアに勝利して日本は盛り上がっています。
次節の対戦相手はセネガル。その国についてあまりよく知らない人もたくさんいるでしょう。
すこし気になって当地の報道などを見ていると面白い記事を見つけました。
サハラ砂漠でワインを造っている人がいたのです。
「セネガル発のワインはバオバブの木の影で造られる」
セネガルの首都、ダカールの南東約60kmの位置にあるニェウォックという場所にそのドメーヌがあるのですが若いぶどうの樹以外にはバオバブの樹しか見当たらないような平原です。
ここはセネガル在住のフランス人2人によって造られたドメーヌで、名前を「クロ デ バオバブ」という見たままの名前です。彼らはそこに10ヘクタールの土地を購入しました。
元コンピューターエンジニアのフランソワ・ノーマン氏と元保険会社勤務を経験したワイン醸造家フィリップ・フランコワ氏。はこう語ります。
「この地には目立った四季はないが砂漠なので昼夜の温度差はある。それはぶどう造りには必要な条件です。
フランスでは収穫日はおおよそ決まっていますので収穫はある程度予測できるものです。ここセネガルは放置しておくとすぐにダメになってしまう。ただし個々の気候の利点は二期作ができる、つまり年に二回収穫ができるところにある。」
もうひとつ大きな問題があります。それは水の確保です。ぶどうの樹とはいえ、この地では水の供給が必要でなのです。それについては投資をして灌漑システムを導入しました。180mの井戸を掘削しました。
ぶどうの苗木も予測不能な初めての試みであったため、地中海沿いに植えられている品種を参考に、カベルネ・ソーヴィニョン、サンソ、グルナッシュ、シラー、サンジョベーゼを持ち込み試しました。
「しかし、カベルネは育つのに長くかかりすぎてうまくいかない。再テストすることもないでしょう。輸出用の生産をするためにはテストの時間が必要です。」とフランソワさんはいう。
収穫初年度は無事、年二回の収穫が成功し、500本の赤ワインとロゼワインをリリースしました。
価格も7000CFAフラン=約11ユーロでヨーロッパではお手頃だが、セネガルの富裕層ターゲットに設定しました。セネガルの中産階級は地元の食材を使った食べ物を好きなのです。
セネガルでは有名な「ティエップ ブー デュンヌ」というフィッシュフライライスプレート、ヤッサプーレというチキンライスプレートに玉ねぎ、レモンのソースとのマリアージュをイメージした。

フランスで醸造学を学んだセネガル人のモフシーヌ ディウフ氏は「ワイン文化はここで生まれ、育ちつつあります。」と語ります。彼は2013年にフランスからセネガルに戻りこのドメーヌで仕事をしています。

この国は住民の95%がイスラム教徒でありますが、その教義の理解の深さは様々であるために、アルコール飲料の売れ行きは決して悪くなく、ワインやスピリッツは年間約2000万本も売り上げがあるという。
一方セネガル政府はイスラム圏の国であるため輸入ワインについては125%の関税ををかけるため、セネガル国内で生産された飲料を選択する傾向が高い。醸造家ディウフ氏によると国内生産の飲料ははるかに安価ではあるが、健康に深刻な被害をもたらす可能性が多いという。

一方、2015年に初めて瓶詰された、クロ デ バオバブはダカールに出荷され好評を得ているとのこと。赤ワインは熟したプルーン、ロゼはコート ド プロヴァンス、コート デクスのロゼのようだ、と評価されました。
二人の生産者は、「将来はバオバブの枝に座って、この畑を見ながらワインを試すことのできるマジカルなワインバーを作りたいと」将来の夢を語りました。

Aqua Vitae
河合吾朗
ブルゴーニュワイン 普段飲みのブルゴーニュ
2018年6月20日 第三百八十三回配信
フランスワイン、特にボルドーやブルゴーニュは高額、普段飲みとしては手に取るのはなかなか難しいアイテムです。そんな高級ワインのイメージがあるブルゴーニュワインですが、筆者は造る人たちに会うといつも聞いてみる質問があります。
「あなたはプレミアムなワインを造っていますが、普段から自分の作っているワインを飲んでいるわけではないですよね。」
すると、生産者は「毎日、こんなワイン飲んでいるわけではないよ。僕が好きなワインはアリゴテ。」
という回答が結構多いのです。どんな料理にでも合わせるアイテムで何も考えずに冷蔵庫に置いてあるのを気軽に飲むことが多いようです。

日本では使う白ワインはシャルドネが多いように見えますが、作る側から見ると自分で飲むのは、という回答に対してアリゴテというぶどうで造られた白ワインが圧倒的に多かった。
そんな、裏メニュー的な存在のアリゴテなのですが、この間、今回紹介するトラペ ロシュランデのアリゴテ2008年というバックヴィンテージを開けてみました。
とても、練れた味わいで果実の落ち着き、酸とのバランスの良さ、アフターがすっきり、風が吹き抜けるようなさわやかさがあり、こういうお手頃のブルゴーニュブランでも熟成するのだなと感心させられました。
現行ヴィンテージはやや新しめですが、早く飲んでも、寝かせても楽しめる、ブルゴーニュの底力を感じるアイテムでした。

トラペ ロシュランデ ブルゴーニュ アリゴテ 2014
http://aquavitae.ocnk.net/product/216
トラペ ロシュランデ ブルゴー ニュ ルージュ 2014
http://aquavitae.ocnk.net/product/217
以上、お問い合わせお待ちしております。

イタリアワイン 地中海で白ワインを作ること
イタリア、トスカーナのアレッツォはフィレンツェとペルージャの中間にあり、シエナに程近い。歴史は古く旧石器時代の骨が発見されたり、古代ローマの歴史家ティトゥス・リウィウスはエトルリアの首都でもあった記述しています。その後古代ローマにも吸収された経緯がありますが、もちろんワイン製造の歴史も古くから残っています。古代ローマのワインは今の製法とは全く違ったスタイルでアンフォラを使って醸造されているのはジョージアなどで造られるアンバー(オレンジ)ワインに近い製法で香辛料や蜂蜜が加えられたり、松脂のような状態で加水して飲んだりされていたようです。いまの果実味や酸のきれいなスタイルとはまったくことなっていたことはたしかでしょう。つまりローマ帝国全盛の頃地中海沿岸で造られ、楽しまれているワインは酒精強化ワインやアンバーワインのようなスタイルであり、そのスタイルのワインを造るのに適したぶどうの栽培が行われていた傾向が想像できます。
今回紹介するトスカーナのカルロ タンガネッリはその伝統や古代のワインを意識していたのかどうかはわかりませんが、5代目のマルコ・タンガネッリは言います。「古代ローマ時代からトレッビアーノを造っていることには理由があります。ガレストロと呼ばれる石灰岩と泥灰岩の混じった土壌はトレッビアーノに最高の土壌なのです。」と言っているように現代のぶどう栽培においても最適な環境であると感じられます。
アナトリーノhttp://aquavitae.ocnk.net/product/44やアナトラーゾhttp://aquavitae.ocnk.net/product/776
はトレッビアーノの美味しさを最大限抽出するために、収穫は10月中旬以降に皮が強く厚くなった完熟の状態で行い、マセラシオンすることで皮のタンニンと旨味、深い味わいが楽しめるトレッビアーノになります。マセラシオンすることは、昔から行われている伝統的な造り方なのです。
ワインは飲み手の嗜好やマーケットによって味わいのスタイルを造られるものですが、本来ある環境にそって作られる、ぶどうにとってのベストスタイルを楽しむという違うアプローチを試してみることは新しい発見をもたらせてくれるでしょう。