2017年9月

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アルザス 多様な地層の多様な品種
2017年09月26日 第三百三十二回配信

日本に入ってくる代表的なフランス アルザスワインはゲヴュルツトラミナーとリースリングですが、アルザスは北のストラスブールから南のコルマールまでのヴォージュ山脈沿いに南北に広がる狭いエリアに51の小区画が定められています。
多様な地層に加えてミクロクリマも多くみられ、北緯が高いわりに夏は暑い日が続いたり、山脈の影響で朝夕に霧が出たりと天候も多様です。
歴史的、地理的にドイツとの関係も深く、食文化の影響も受けているのでアロマが豊かなワインも多く作られています。
これだけの多様性を2つの品種だけで表現できるとは思いません。ピノブラン、シルヴァネール、ミュスカ、ピノグリ、シャスラなどのぶどう品種との相性もみていきたいものです。
このように白ワインが多いのですが、アルザス料理のシュークルート、ベッコフのような豚肉、ソーセージとの相性も良く、肉料理との相性の可能性も見出せます。
以前、コルマールで食事をした時に食前酒から食後まで白ワインで通すことを勧められそのようにしたのですが白ワインと肉の可能性も大いに感じさせる組み合わせでした。
当店でもおすすめしているロリー ガスマンはドイツスタイルとも言える凝縮した果実味が注目される生産者ですが、リースリング、ゲヴュルツトラミナーだけでなくミュスカ、ピノグリなどにも注目すべき味わいがみつけられました。
食事との組み合わせは多種多様ですがベースとなる、果実、きれいな酸が食欲を高めてくれます。
秋の食事におすすめの一本です。

ボルドーで価値のあるワインのひとつ、白、甘口のソーテルヌがありますが、近年デザートワインの需要が落ちつつある市場でソーテルヌの各生産者は辛口ワインへの転換を図るところも少なくありません。
ボルドーのガロンヌ川の上流にボームという町があります。ソーテルヌワインのファンでないと知らないと思われるような街に日本ではそれほど著名ではないシャトーシガララボーという生産者がいます。
この畑の歴史は1660年にさかのぼります。当時のオーナーは市長で、オーナーが何人も変わる歴史がありました。それでもこの畑はオー・ボームの丘の斜面にある南向きの砂質土壌の畑でシガラの宝石といわれるほど、並外れた完熟した葡萄を生み出し、地味ながら高い評価を得ていました。
1855年のパリ万博の際のボルドーワイン格付け時にも一級の格付けを与えられるなどポテンシャルは抜群でした。しかし1930年から第二次世界大戦終了あたりまでは困難な時期を迎え、またもオーナーがどんどん変わっていきます。1950年にはジネステ家がシャトーマルゴーを購入するためにラボーの畑を手放したい意向を示し、現在のオーナー、ランベール デ グランジュ氏がこの地を支配、販売経路を変えたり、ワイナリーに投資したりして改善を図りました。1986年以降は味わいの評価も安定して高い評価を得るようになりましたが、甘口ワインの需要量が落ち込むと読むや否や父、ランベールをサポートしていた娘、ロールが2007年にテクニカルディレクターとしてデイリーとして楽しめるより安価な辛口ワインを開発、2009年にリリースしました。個人的な感想ですがネームバリューは地味ながらテロワールを反映した骨太で味の構成がしっかりと作られたワインであると思います。まさに隠れた宝石という表現がぴったりだと思いました。
http://aquavitae.ocnk.net/product/611
秋のカタルーニャ
日本でも暑さがやや落ち着いてきましたが、フランス、ラングドックの南、スペインとの国境付近にある地域では夏のにぎやかさも落ち着いて静かなたたずまいです。
春のアーモンドの花が咲きほころぶ桃源郷のような景色、夏の小さな入り江がつづく海の景色もいいのですが、秋の落ち着いた景色の中、おいしい食事を楽しむのもよいタイミングです。
となりのスペインではカタルーニャ州独立の是非を問う住民投票の熱が高まっています。州は、10月1日に設定した投票に向けて地元自治体に協力を呼びかけているが、スペインのラホイ首相は、州側の要請に従わぬよう求めた。
カタルーニャが独立するとスペインの経済に大打撃を与えるだけでなく、カタルーニャはEUからの離脱を余儀なくされます。こうなるとイギリス以上に様々な波紋が広がることは必至です。
また日本でも有名なFCバルセロナも首位に立つリーガエスパニョーラからの脱退、チャンピオンズリーグも当然出場できなくなり、カタルーニャ国内でリーグを創設することになりますが、カタルーニャ国内でまともに太刀打ちできるのはRCDエスパニョーラがやっとでしょう。
独立に伴う問題は多々ありますが、結局のこの独立は、カタルーニャの旗、サニェーラが表す「黄金と血」を意味するとおり、民族意識か経済かどちらを大義として推し進めていくかになるでしょう。
カタルーニャはスペインだけではなくフランスのラングドックエリアにも及んでいますのでフランス側でも独立機運が高まる可能性もあります。
しかしながら現実的にはフランス側の最大の都市、ペルピニャンには民族主義的な活動家も多いのですが、住民の大半は学生、引退後のセカンドライフを過ごす方が多いので、雰囲気的には強引なデモやアピールなどはなさそうなのんびりした空気です。
そんななかで秋のジビエや焼き野菜を中心とした料理には地元で作られた自然派ワインがおすすめです。
海沿いの小さな町アルジュレス シュル メールのピック ジョアン。バニュルス シュル メールのジュリアン ペイラ、フィトーのアルレタがおすすめです。特にグルナッシュの古木がワインの味わいに大きく影響しており、お手頃な価格で練れた味わいが楽しめます。
http://aquavitae.ocnk.net/product-list/15

チリワイン新着 星に一番近いワイン
テストで少量ワインを輸入しましたという知らせを聞いて早速、試してみることにしました。
それはチリ最北のワイン生産地、アンデス山脈のエルキヴァレーで作られているワイン。
もともとはぶどう蒸留酒ピスコやフルーツの生産地でした。そのワインは世界で一番星に近いワイン。標高2200mでつくられているだけでなく、アンデスの澄んだ空の下で作られているので本当に星と近い。こんな高い場所でぶどうが作られている場所はほかにありません。エルキやリマリなどの北部のワインにはこれまで日本を支配したチリのビッグ10メーカーはここにはありません。小規模生産者ばかり、これまでは輸出すらままならなかったため日本では無名の存在でした。サンチアゴから北へ500kmいったところにラ セレナというチリでも有数の経済成長地域、または有名海水浴場があるがその付近のエリアにあります。リマリヴァレーは海のそばの畑で冷涼な海風の影響を受けるがエルキヴァレーはもっと内陸に入った場所にあり、本当にアンデスの山の中。ここは天文台も多くあるほどの高地でワイン造りも天文学の助けでワインを作る?そんな神がかったワイン造りを行うプロジェクトが10年ほど前から始まった。
2004年にチリのワインメーカーオブザイヤーに輝いたマルセロ レタマル氏もその場所のポテンシャルにほれてプロジェクトに参加。よりクオリティの高いワインになりました。
シラー50%、ガルナッチャ26%、プティシラー14%、プティヴェルド10%のブレンドですが聞くと凝縮感のある濃い目のワインのイメージですが、味わいはそれとはうらはらにエレガントで透明感があります。無機質の土壌、激しい太陽、まったく雨も降りそうにないタフな環境で育ったぶどうはエレガントだが筋肉質で質実剛健なイメージ。
テストで輸入したため本数がすくないので品切れしたら申し訳ございません。
宜しくお願いいたします。
http://aquavitae.ocnk.net/product/670
イタリアワイン新着 廃墟に若い力
イタリア南部プーリア、シチリア西部から新しい生産者のワインが入荷しました。
前回ご好評いただいておりましたプーリア州のカルペンティエーレとシチリア西部、マルサーラのマルテーゼ。
この生産者に共通することは大昔に繁栄した町が一度すたれてしまいましたがそれを若者たちが立て直すストーリーがあります。
プーリアのカルペンティエーレはカステル デル モンテにありますが、これは13世紀に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世(フェデリコ2世)によって建築された八角形の城。
この近くには世界遺産でもあるマテーラもあるが17世紀にはバジリカータの州都になり繁栄します。
一方のシチリアのマルサーラは紀元前4世紀ごろカルタゴ人が建設、その後のローマ人支配、アラブ人支配で繁栄します。マルサーラはアラビア語でマルサ・アラー(神の港)、マルサ・アリー(偉大な港)と呼ばれたのが語源ですが、近年は静かな地方の町となっています。ここで作られているマルサーラ酒も18世紀にイギリス人が作り出した酒精強化ワイン。航海用に作られたワインですがいまでは消費量が落ちています。
そんな過去に過ぎ去った土地、フリードリッヒ2世が鷹を放ち、狩りを行った土地でギリシャから来たとされるプーリアで一番古い品種、ネロ ディ トロイアを使ってワインを作ります。
マルサーラでは歴史ある土地を守る意味でビオロジック認証を取得し、伝統的製法を守るマルテーゼのジャンフランコ氏。一見過去のすたれた土地に見えるようなところでも若い力が育っていることが楽しみだし、ワインを飲んで応援したくなります。
そろそろ今年の収穫が始まります。今年のぶどうの出来が楽しみです。
http://aquavitae.ocnk.net/product-list/29
http://aquavitae.ocnk.net/product-list/20
日本ワイン新着 変わりゆく日本のスタイルと味わいの嗜好。
日本のワイン、入荷しました。
127年間の不断の努力と、国産葡萄にこだわったスタイル。それだけでなく日本人の味わいの嗜好にあわせて変わりゆく洗練された味わい。筆者も以前の日本ワインのイメージを変える意識を持たなければいけないと思わざるを得ない時期に来ています。
この変わりゆく流れをぜひ見てください。
http://aquavitae.ocnk.net/product-list/46