ルーマニア、モルドヴァワインの可能性

ルーマニア、モルドヴァのワインボトルを日本で目にすることはそれほどないという人が多いかもしれません。
しかし、意外なところで口にしているかもしれません。今ではだいぶ少なくなったようですが、以前は国産ワインのラベルでも中身はルーマニア、モルドヴァからバルク輸入して瓶詰していたのです。
日本のワイン製法の法整備がそれを可能にさせていたのですが、現在は山梨でも原産地統制呼称が設定されるなど、栽培地の表示について明確にされるようになりました。

ルーマニアとモルドヴァをあえて一緒に書いているのですが、これは単に行政上の区分ではなく、民族、言語、歴史はほぼ同じとしてひとくくりにしています。
この地域のぶどう造りは歴史も古く、19世紀後半ではフランスでもそのレベルや価値が認められ流行したようです。しかし、16世紀にはオスマントルコの侵略により、300年間程度、ワイン造りが禁止されました。そして、19世紀初頭、帝政ロシアの一部となり、コーカサス品種の植え替え、その後の東ヨーロッパにとってワインの悲劇ともいえる社会主義体制の導入で、そのワイン造りもレベルを追求することなく、ソヴィエト連邦向けの大量生産のバルクワインになり下がってしまいました。
ルーマニアの社会主義体制が崩壊した1989年以降、再び、その価値が認められることになります。
もともとローマ帝国の支配地だったこの地は言葉を聞いてもわかるように首都のブカレストはイタリアに近い感覚を覚えます。

当ショップに入荷しているワイン、md-cdr-0001 シャトー アスコニ メルロ (赤)はその隣のモルドヴァで造られています。
筆者はこのワインを試飲して、ルーマニアワインと違う味わいだと思いました。ルーマニアと逆側に国境を接しているウクライナの黒土の土壌が味わいに反映していると思われます。ここはもともと、「ヨーロッパのパン籠」と言われるほどの穀倉地帯で作物がよく育つ豊かな土地です。そのためか、よくこの地域のテロワール(地味)を反映していると感じられます。また、このワインは首都キシニョウのある中部、コドル地方で造られるため、ワインが多く造られる南部、海の近くの温暖な気候で造られる果実味あふれるワインとはタイプが違い、タンニンや酸とのバランスもいいと思います。ややタンニンのストラクチャ(骨組み)がしっかりしていますが、これは地元の料理、特に羊などの肉料理とのバランスの良さを考えられているようなイメージを受けました。価格もお求めやすく、しっかりした味わいを持つ肉に合わせるにはお勧めの一本です。
味の要素が複雑に絡んでいることを感じたことにより、この地域のレベルアップを感じるとともにこれからの可能性も期待させるワインです。この地方のワインはデイリーワインの位置づけとして注目したいエリアです。
よろしくお願いいたします。