自然派ワインの位置づけ

世の中に自然派ワインと呼ばれるワインはすごくたくさん出回っています。
ただどこから自然派?どこのまで自然派と明確に説明できるものはあるのでしょうか?
ぶどうは自然からできるのだから工業製品でなければ自然の作物です。
以前は二酸化硫黄(SO2)が入ってないビオワインを飲んだら頭痛がしなくなったとか翌日の二日酔いがなくなったとかというエピソードが聞かれるようになってからやたらビオや自然派をうたうワインに傾倒されるお客様が増えたような気がします。

その線引きはいまだもってよくわかりません。完全無農薬がいいのかどうか?完全無農薬でも病気にかかってぶどうが育たなければワインはできません。
生産者さんに話を聞くとSO2は子供の予防注射のようなもので放置しておくと雑菌にやられてしまうという話も聞きました。SO2はローマ時代から使われていて、人によってはそのうちなくなるという話も聞きました。

畑のぶどうの樹に完全無農薬状態に育てたとしても、その周辺の環境で薬品が使用されている場合はどうでしょう?例えば農機具やワイナリーの内部での洗浄や清掃に薬品が使われていたり、コルクやボトルの洗浄に使われている場合はどうでしょうか?
あとはボトルにオーガニックワイン認定と書いてあっても、説明をよく見ると数年前からオーガニックにしたと書いてあったりすると、その畑にそれまで蓄積された農薬が数年で解消するでしょうか?該当する畑ではオーガニックになっていてもその隣の畑はどうでしょうか?例えばオーガニック栽培されている畑の斜面の上で農薬がバンバン使われていたとして、雨や土砂崩れでその成分が流れ込んできたらどうでしょうか?
オーガニックの中でも完全無農薬から減農薬まで様々なレベルがあります。農薬と言っても化学薬品から自然にあるものを調合したものまであります。

表示の問題にしてもそうです。ラベルにこれ見よがしにビオディナミとかオーガニックとかエコセールとかデメテールとか記載しています。それ自体は悪いとは思いませんが、もう一方の側面からみると営業的な記載に見えてしょうがない時もあります。これを記載した人の意図はなんでしょう?
ビオディナミやオーガニックを実践しているにもかかわらず、なぜそういう記載をしないのか?商売っ気のない生産者さんに話を聞くと、昔から続けてきたことでそういう農法を特別視しない、当たり前のことをなぜわざわざラベルに記載するのかと一刀両断されたこともあります。自然界全体に優しい農産物を作るということはその環境を借りて造らせて頂いているので周りの環境に影響しない、迷惑をかけないのは当たり前のことだともおっしゃっていました。
ラベルに自然派の類の文言が記載されていなくても真面目にぶどうを造っている生産者はたくさんいるのです。

こんなことを考えていると結局は「自然の中でできたものをとった人間がどのように扱うか」、に行きつく気がします。
筆者の考えでは、どういうワインをお客様にお勧めするかの一つの要素として、そのワインを造った人がどんな人かということを良く見るようにしています。
よく、育てたペットが飼い主に似ると言いますが、ぶどうも同じような気がします。
この人が育てたぶどうからできたワインの味はこうなるんだなと納得できるのです。そしてそれをお客様に伝えなければなりません。
大手メーカーはたくさんの人が関わって作っているのでそういう背景は見えにくいのも事実です。それが悪いというわけではないですが、こういう仕事をやっていくうえで伝えるべきものがはっきりしているということが大事だと思えるのです。