ワインの価格

ワインを購入するとき、「ワインって高いな」と感じた方々も多いと思います。
筆者はワインを売っている立場の人間ですが、では、なんでこのワインはこの価格なのかといつも考えさせられることがあります。

手元に届くまでのルートを逆算して考えると、お客様に最後に届ける、ショップの運営、管理、運送コスト、輸入業者の輸入にかかるコスト、生産者、ネゴシアンの出荷コスト、生産者の醸造、熟成期間のコスト、栽培、収穫時に雇用する人たちのコスト、ぶどうを健全に育てるためのコストなどなどいろいろあげるときりがありません。

世界のいろいろな国の収穫時にワイナリーを訪れると、いつも聞いてみることがあります。

雇用者の方たちには一日ぶどうを収穫していくらもらえるの?

そうすると帰ってくる答えはその国によってまちまちですが、雇用者さんの給料を聞いてびっくりすることがあります。こんな給料で生活していけるのか?そうなると最終的に価格の交渉をしているときに後味の悪さを感じることがあります。払える人がもう少し助けてあげて、末端の雇用者の生活が少しでも豊かになればいいなと。

そんな問題を考える一方でフランスのボルドー、ブルゴーニュではピンキリですが、格付けの高いシャトーやブルゴーニュの著名なドメインでは収穫の特別なチームがいます。彼らはどのぶどうをどのタイミングで収穫するのがベストなのかが判断できる、そのときにどうやって鋏を入れて摘み取るか、摘み取った後、そのぶどうにダメージを与えないようにどうやって運ぶのか、事細かに訓練を受けたチームだけがその畑に入ることができます。
それは技術者の集団なのです。

ボルドーやブルゴーニュの超高級ワインを造るワイナリーでもぶどうはぶどうの価格でしかないが、熟成が終わって、瓶詰、ラベル貼付が終わった瞬間からその価格が一気に高騰します。
ボルドーはプリムールという、樽の中にまだワインがある新酒の状態で価格を設定し、まるで株の投機を行うかのように買い手をつけていきます。近年は、中国やBRICSなどの富裕層が青天井ともいえるシャトーの言い値で買うので、価格は高騰する一方です。そして彼らはこう言います。
「株は紙切れ、食べられないけど、ワインのプリムールは下落しても飲めばいい」と。
そして、パーカーポイントなどの評価がさらに加えられ高いシャトーはさらに高くなります。
格付け上位のシャトーはまだまだ強気ですから、中、小シャトー群のワインとはさらに格差が広がる一方です。
もともとプリムールはボルドーの生産農家さんたちを救うための救済策として始まったものでしたがもはやそれは見る影もありません。

そういう特級のシャトーの人たちの話を聞くと、本当にビジネスマンだなあ、と感じます。商品やお金の回し方を実によく考えていると感心させられます。

一方、小さな生産者と話を聞くと、天候のこと、畑のこと、ぶどうのこと、出荷のこと、ワインは自分の息子、娘のように話してくれます。本当に気のいい農家さんと話していると感じます。
その話の中で彼らは近年のヨーロッパの天候不順は大変だといいます。冷夏、熱波、雹の被害でぶどうの実や樹がだめになった年があり、空の樽が転がっていて、見るも悲惨な状態だったところもあります。
農家を辞めようとした人たちもいましたが、がんばって少ないながらも出荷を続けてくれた人もいました。

畑と消費者さんたちの間でなんとかよいワインを届けようとがんばる生産者、ネゴシアン、輸入担当者さんの熱い思いを聞いていると、その過程で適正な価格が設定されているワインは高いものでもないし、その人たちにがんばれとエールを送る意味で適正なお金を払うことが大事だと考えさせられます。

この仕事が始まってまだ間もないですが、これまではいろんな地域をまんべんなく品揃えしていました。

でも、これからは、小さな生産者>小さな輸入業者>小さなショップ(つまり私です)>消費者という流れ、あるいやユニオンといえるべきものを造っていきたいと思いました。そのためには生産者さん、輸入業者さんのポリシーや思いを正しく消費者さんに伝えていく努力を続けていかなければいけないと心に留めております。