水彩画か油絵か

お客様にベストなサービスを日々考えておりますと、ワインと食事の相性について思いを巡らせますが、そんなときに大きく分けて二つのパターンがあります。

食べ物を食べた後、口の中をリフレッシュさせる効果と口の中に残る風味に重ねてワインの風味をマッチさせる効果です。

この考え方は筆者のもつイメージでいうと水彩画か油絵かというイメージです。

それぞれの絵の具の持つ特性を活かしておりますが、水彩画のさわやかさに比べて油絵は絵の具を重ねていくので重厚感がありますね。

夏はさわやかな水彩画のイメージで考えておりましたが、食欲の増す秋にはこの重厚感が欲しくなります。

また、良いワインというのはこの重厚感にきちんと味わいの層があります。果実味の甘さ、酸味やタンニンの渋みが楽譜に書かれているメロディのようにきちんと層をなしてやってきます。

そしてホストはボトルのコルクを開けるタイミングを計り、お客様にベストな状態でサービスしていく、指揮者のようなものでしょうか。味わいが単調なリズムでやってくるのは面白味にかけますので、アイデアを出さなければなりません。

気候もやや涼しくなり、赤ワインがおいしい季節です。ワインを振舞うお客様をイメージして、どういうお食事にどういったワインをどのタイミングで合わせていくのか、同じ食材、同じワインでもホストのアレンジで様々なハーモニーを演出するのは芸術を創造していくことと共通しているような気がします。

日常の食事の中に異空間を作り出すためにボトル一本でちょっとした工夫のお手伝いをしたいといつも考えております。

よろしくお願いいたします。