TPP交渉はワイン購入に有利に働くか。

2015年10月10日 第百七回配信

最近、テレビのニュースでは農産物の輸入協定に関する交渉、いわゆるTPP交渉の話題が世間をにぎわせています。
しかし、内容を見ていると消費者にとって恩恵があるかどうか?という疑問が出てきます。
もちろん、交渉国相手は自国が有利になるように働きかけているのですから綱引きはそううまくいくはずもありません。
US、オーストラリア、ニュージーランドあたりのワインに輸入価格が抑えられ、安くなるような宣伝文句を見ますが果たしてそうなるのでしょうか?

関税がゼロになる期間が8年ほどかかるようですが、現在、日本はワインに対して、15%又は125円/Lのうちいずれか低い税率を適用している。この割合を8年かけて撤廃しても、消費者にとってお値打ち感があるものかどうか、わかりません。

一方、国内生産者の中には海外から葡萄液やワインをバルクで輸入して、瓶詰、ブレンドして出荷しているところもあり、恩恵を受けるメーカーもでてくるでしょう。それは大手メーカーで、中小規模の生産者にとっては一応、死活問題となるようですが、ワインはその土地の地味を表現するものですから、基本、その土地のワインはそこでしかできないというオリジナリティを売りにしているので、被害がすぐに出るとは思えません。

USAのワインはもともとかなり高価なワインが多く、少しずつ値下げされる可能性があってもそれほど、お値打ち感はないかもしれません。最もドルの為替レートが急変すれば、関税分の価格は吸収されてしまうかもしれません。

そんな中で筆者が注目しているのはチリ、カナダ、オーストラリアです。
チリワインは2007年以降、関税引き下げと同時に輸入量も増加しています。2019年4月からは関税がゼロになるようです。質も向上しており、以前、輸入アイテムは大手メーカー10社の寡占状態でしたが、ストーリーとオリジナリティのある小規模生産者の入荷も増えてきて、チリワインのイメージが変わりつつあります。

一方、このチリワインの急速な関税引き下げ効果を背景にEU諸国に交渉を迫り、兵糧攻めを画策する日本政府の思惑がうまくいけば、ヨーロッパのワインの価格にも値下がりの兆しが出る可能性もあります。


オーストラリアワインは近年、急激な気候変動による、収穫量減少、価格の高騰などでセレクトするワインが難しい印象ですが、関税が段階的に引き下げられれば、日本のマーケットの中で生き残るアイテムが出てくるでしょう。

カナダはTPP交渉に正式参加して、これからというところですが、ワインのレベルは近年上がっておりますので、価格が見合えば、すばらしいコストパフォーマンスのワインが増えてくることが予測されます。

ワインの価格決定の条件は関税だけではなく、為替レート、輸送費(燃料費)が大きく影響してきますので、この決定がすぐに価格に影響を及ぼすとは言い切れません。

消費者の立場としては購入の際の選択肢が多くなりますが、価格に惑わされず、味わい、飲むシチュエーション、食事とのマリアージュを考えて、これはという一本を選ぶ情報を持って、購入していただきたく思います。