シエナに恋して

イタリア文化会館主催、第2回「フォスコ・マライーニ賞」受賞セレモニーにご招待する機会を頂きました。http://www.iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo

1930年代に来日、日本人の生活から見える自身の視点から日本文化を独自の学問を確立させたフォスコ・マライーニ氏を冠にした賞です。対照的に審査されるのは日本語でイタリア文化の研究を発表した作品に贈られます。

今回の受賞作品は東京大学教授、池上俊一先生著作、「公共善の彼方に―後期中世シエナの社会」http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0765-8.html
が受賞されました。

この受賞セレモニーはフォスコ・マライーニ氏のお孫さんがおじいちゃんの思い出を語ったり、終戦直後の日本で研究を続けるビデオを上映されたりと興味深い内容でした。

この日一番印象に残ったのは、池上教授のスピーチです。
池上教授は西洋中世史がご専門で、この本を20年かけて完成されたそうです。
当時はパリに滞在していたそうですが、休暇を利用してイタリア、トスカーナのシエナに滞在する機会があり、そのたびに環境、生活、周りの人たちの温かさに触れ、その魅力にひきこまれていったとのことでした。

シエナは一度しか訪問経験がありませんが、イタリアはシエナだけではなく町のメインストリート以外にも路地の中に入ると通りにテーブルを並べたオステリアやタベルナが並んでいて、その中に自分のお気に入りとなる料理を見つけることが良くあります。
イタリアは今では一つの国ですが、州ごとにまるで独自の国であるかのようにその地方特有のチーズ、サラミ、パスタ、主菜が存在します。
店主も肩ひじ張らずリラックスで話しかけてくれるので緊張感なく、ちょっと傾いたテーブルでのんびりと食事をした記憶があります。
食材も限られたものしかないことが多いが、店主が自信をもってとっておきの食材をすすめてくれるから、はずれがないことが多かった。
やはり、こういうところでごはんを食べる一番の動機となるのはテーブルを中心とした空間や空気が大事なんだと思わせてくれて、まさしく池上教授のお言葉の「シエナに惚れてしまって…」という言葉に頷いてしまいました。
もちろん、当店でも扱っているワインもその空間を彩るピースの一つにならなければいけなくて、価格やワイン単体の味の評価だけではなく周りのピースとのつながりが大事だと思っています。

もう一つ、心に残る言葉がありました。
「研究者の言葉をわかりやすい言葉で伝える・・・」
というくだりです。
これは私自身にも言えることです。ワインを取り巻く関連語句は消費する人たちにとってはなじみのない言葉、わからない言葉が案外多いのだと思いました。それを多用することなく、わかりやすい言葉で飲み手の気持ちにうまく伝わる努力を続けなければならないと改めて自身に問わなければいけないと感じさせていただきました。

そういえば、池上教授のスピーチはこの時トークした人の中で一番、出席者の笑いをさそっていたなあ。

店長は関西人だけにもっとトークを磨かないと、と反省した次第です。

この日はいろいろと勉強になることが多い一日でした。

トスカーナを始め、イタリア食材に合うワインもたくさん取り揃えております。
リストにない商品でも、こういう食事とワインを合わせたいなどのお問い合わせは大歓迎です。
よろしくお願いいたします。